Image courtesy of Buildmedia

Unreal Engine のリアルタイム テクノロジーを活用した高級物件の販売用ツール

2022年8月24日
不動産業界では、販売用ツールとして、従来式の 2D レンダリングから脱却し、リアルタイム テクノロジーを採用し始めています。高級住宅プロジェクトのデベロッパーは投資回収のために完成前の販売契約に大きく依存しますが、購入希望者が新しい住まいをイメージするのは必ずしも簡単ではありません。

住宅の購入希望者が物件をイメージしやすいよう、建築業者が Unreal Engine のリアルタイム テクノロジーを使ってオンライン ツールを作成した事例は以前に紹介しました。しかし、富裕層向けの高級物件を扱うデベロッパーが対処すべき課題はもっと大きなものです。高価格物件の場合、購買層がずっと小さく、商談が難しくなります。

デベロッパーが大規模な高級物件プロジェクトへの投資を売上に結びつけるためには、既成概念にとらわれず、より幅広い客層を視野に入れたときに自社の完成前の新築プロジェクトを際立たせることが必要になっています。そのためにデベロッパーやそのマーケティング チームは現在、リアルタイム テクノロジーの可能性を探り、完成前の物件をこれまでにない方法で紹介するインタラクティブな販売用ツールの作成に取り組んでいます。こうしたイマーシブなエクスペリエンスには、インタラクティブな 3D モデルから VR によるウォークスルー、街全体のデジタル空間での再現まで、あらゆるものが含まれます。
 

不動産販売におけるリアルタイム ビジュアライゼーションの可能性を広げ始めている会社の 1 つに、ニュージーランドに拠点を置く Buildmedia があります。この会社は、さまざまな業種向けにイマーシブなエクスペリエンスを作成していますが、その原点は建築ビジュアライゼーションと不動産にあります。Buildmedia は以前に、ウェリントン市議会の依頼で市のデジタル ツインを作成し、市全体の資産の概要を把握できるようにしました。ウェリントン市のデジタル ツインはインタラクティブになっており、リアルタイム データを利用して交通網や航空路の状況、自転車センサーのデータ、駐車場の空き状況を示します。その目的は、将来的な建造物や都市のインフラを政策立案者がイメージできるようにすることでした。

Realspace:インタラクティブなバーチャル住宅

Buildmedia が特に力を入れていることの 1 つに、建設前の物件の販売を支援するインタラクティブなプラットフォームの開発があります。そのために開発したのが Realspace です。これは、多様なエクスペリエンスを提供する完全没入型のデジタル販売ツールです。Realspace は、スマートフォン、タブレット、または PC からシンプルなタッチ インターフェイスでアクセスでき、また VR ヘッドセットを使って完全没入型のエクスペリエンスに浸ることもできます。営業担当者は、相手や場所を問わず、Web ブラウザーを使ってインタラクティブなバーチャル住宅をプレゼンテーションできます。インタラクティブ機能には、すべての部屋や階からの眺めがわかる統合されたビデオやアニメーション、そして高解像度のレンダリングを購入希望者にすぐに送信できるバーチャル カメラが含まれます。購入希望者は、完成前の環境の中を歩きながら、建築材の仕上げを変えたり、照明を調節したりすることができます。
 
Image courtesy of Buildmedia

Buildmedia によると、マーケティングに Realspace を活用した物件は販売期間が 43% 短縮しました。さらに、このプラットフォームにより、適切な購入希望者にアピールできるため、有望なリードの獲得が 38% 増えました。最終的な結果として、購入者の満足度が 82% 向上しました。

Buildmedia は、この最先端のアプローチを多数のプロジェクトに取り入れてきました。これには、Iris Capital と不動産会社 Colliers による Victoria & Albert の開発プロジェクトも含まれます。この海沿いにある複合用途の開発プロジェクトは、オーストラリア、ゴールドコースト市のブロードビーチに位置し、タワーマンション 2 棟で総戸数は 330 戸以上です。
クライアントは、ショールームにある幅 4 メートルの壁掛け LED ディスプレイを使って物件の宣伝と販売を行うインタラクティブなツールを求めていました。Unreal Engine を活用した Realspace を使い、インタラクティブな外装モデルとともに、住戸内の内装が 3 種類作成されました。

リアルを超えたカスタマー エクスペリエンスの作成

Buildmedia のテクニカル ディレクター、Tim Johnson 氏は、次のように述べています。「このプロジェクトでは、インタラクティブな外装に対して、何か新しいことを試したいと考えました。そこで、完全にインタラクティブなモデルを作成するのではなく、カメラのルートを固定し、Unreal Engine のパス トレーシング機能を利用することにしました」

「ビジュアルの質をさらに高める新しいワークフローを開発したかったのです。インタラクティビティの面でいくらかの妥協を伴いましたが、結果的に画像の鮮明さと品質は大幅に向上しました。このワークフローではまた、ドローンのビデオを取り込んでインタラクティブな外装を作成することもできるため、物件の周囲の環境も詳細に把握できます」
 
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モデルは完全にナビゲーション可能であり、購入希望者が将来の住まいをイメージできる機能がいくつかあります。たとえば、購入希望者は主な階からの眺めを確認できます。また、サイズを確認するための計測ツールや、エージェントが関連するマーケティング資料にアクセスできるギャラリーとビデオのシステムがあります。さらに、外装モデルは在庫管理システムとつながっているため、販売済み、契約中、空き状態の最新情報がリアルタイムでわかります。

「Unreal Engine のおかげで、従来の方法よりも多くの画像を作成できるようになりました」と Johnson 氏は言います。「このプロジェクトには 90 を超える画像を作成したため、クライアントはマーケティング コンテンツを最新の状態に保ち、画像の利用を回避できるようになりました」
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Buildmedia が Iris Capital と Colliers のためにカスタム開発したインタラクティブ ツールは、販売チームと購入希望者から高い評価を得ました。Colliers Residential Australia でディレクターを務める David Higgins 氏は、次のように述べています。「お客様が購入してくださるのは、描写の質が高く、物件を正直かつ誠実に示しているからだとわかっています。レンダリングから Realspace に移行することで、お客様は安心感が得られ、実際の物件についてより詳細に理解できます」
 
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Imerza

リアルタイム テクノロジーを使って販売用ツールのエクスペリエンスを変えた別の事例に Imerza があります。米フロリダ州に拠点を置くこの会社は、革新的な体験型テクノロジーを専門とし、不動産の販売とマーケティングに力を入れています。Imerza のプラットフォームは、ルーツとなる建築会社 Hoyt Architects の社内向け設計ツールから発展したものです。Unreal Engine で設計ツールの開発を始めたのは、クライアント向けのコミュニケーションやプレゼンテーションを改善するためでした。
 
Image courtesy of Imerza

Imerza の共同設立者兼 CTO の Dorian Vee 氏は、次のように述べています。「これらのツールは、完成前のプロジェクトについて効果的に伝えることができたため、そのうち不動産デベロッパーのクライアントが自社の営業担当者や購入希望者を当社のオフィスに連れてきて、プロジェクトの設計のプレゼンテーションを求めるようになりました。こうしたプレゼンテーションの内容に基づいて数百万ドルの取引がいくつかまとまるのを目にして、私たちは販売やマーケティングの面でも明らかな効果が出ていると気づきました。このときに、販売プロセス側の可能性を探ることを決め、最終的に Imerza を独立した会社として立ち上げることにしました」

Imerza にとって、販売プロセスの主な課題の 1 つは、不動産プロジェクトに 2 つとして同じものはないということです。プレゼンテーションはシームレスで直感的である必要があります。このため、コア プラットフォームの上に常にカスタム機能が必要となります。Unreal Engine はその点で柔軟性に優れており、すべてのソース コード、堅牢な C++ API、そしてブループリントと呼ばれるビジュアル スクリプト言語へのフル アクセスが可能です。

Vee 氏は次のように言います。「課題に対処するために、私たちは新しい機能やユーザー エクスペリエンスを開発し続ける必要があります。また、不動産プロジェクトは一般にスケジュールに余裕がないため、こうした開発にはスピードが求められます。Unreal Engine のブループリントにより、当社のアーティストや開発者は、短期間でイテレーションを行い、アイデアを現場で試すことができます。また、コード ベースがオープン ソースであるため、エンジニアはお客様が求める最高水準のエクスペリエンスを提供するために必要なあらゆる変更を加えることができます」

Imerza が提供するイマーシブなエクスペリエンスは幅広く、フォトリアルな高解像度アニメーション、インタラクティブな 3D リアルタイム サイト モデル、リアルタイムの間取り図、ウォークスルー、購入予定者向けのカスタム デジタル パンフレット、フライスルーに加え、時間や季節を調整できるシミュレーション、VR や AR のエクスペリエンス、モバイル アプリが含まれます。こうしたツールにより、営業担当者は、成約までの期間を短縮し、面積当たりの単価を上げることができます。
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Vee 氏は次のように述べています。「リアルタイム ビジュアライゼーションにより、営業担当者は必要なだけ情報を提示して、購入希望者の質問にすべて答え、最終的に販売契約を結ぶことができます。従来のレンダリングではできなかったことです」

リアルタイム不動産の改革推進

Imerza と長年取引がある Two Roads Development は、ここ何年かリアルタイム テクノロジーに取り組んできました。それどころか、Two Roads の Elysee は、マイアミで初めて販売プロセスにリアルタイム ビジュアライゼーションや VR を取り入れ、その可能性を明らかにしたプロジェクトでした。その後の Forté プロジェクトは、購入希望者が将来の自宅の間取り図をカスタマイズし、選んだオプションのウォークスルーをリアルタイムで体験できるものでした。
 
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これを実現するために、内装モデルは、ユーザー入力に基づくアルゴリズムを使って生成されました。その結果、販売チームは開発プロジェクトのすべての住戸内で、可能なオプションをすべて見せられるようになりました。この機能により、事前販売のプロジェクトに対するこれまでの一般的なアプローチが変わり、完成済みの場合と同じように物件を紹介できるようになりました。
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Imerza と Two Roads の取り組みは通常、設計の初期段階から始まります。この段階で、リアルタイム ビジュアライゼーションを使い、プロジェクトの影響を詳細に把握し、承認のための資料を準備します。その後、この設計に手を加えていきます。設計プロセス中、Imerza は必要な追加機能を判断し、プロトタイプを作成します。設計が確定したら、Imerza がイマーシブなマーケティング資料の作成を開始します。
Two Roads と Imerza は、これまでに 7 つのプロジェクトを一緒に成功させてきました。現在は、Unreal Engine を使った次のプロジェクトに取り組んでいます。

Two Roads Development のマネージング パートナー、Taylor Collins 氏は、次のように述べています。「Imerza のプラットフォームにより、物件の詳細が購入希望者に正確に伝わるので、成約までの期間を短縮できます。今後は、特に販売面で、関わるすべてのプロジェクトで Imerza を使用したいです。このツールがあれば、購入希望者のほぼ全員から契約を獲得できるでしょう」

51WORLD

デジタル ツイン テクノロジーのプロバイダーである 51WORLD も、高級物件の販売用ツールのレベル向上に一役買っています。51WORLD は、数年にわたり段階的に、このテクノロジーを都市、交通機関、公園、港など、さまざまな分野のスマート化に応用してきました。特に不動産業界は、51WORLD がデジタル ツイン テクノロジーを国外で応用してきた主要セクターの 1 つです。典型的な事例に、デベロッパー Geocon のために作成したイマーシブな販売エクスペリエンスがあります。それは、オーストラリアの首都、キャンベラの住宅開発プロジェクトを紹介するものでした。

3D のインタラクティブなツールにより、購入希望者は将来の居住環境を探索し、その周辺エリアとの調和を確認できます。このプロジェクトで 51WORLD は、さまざまな住宅開発プロジェクトを中心に、街の広範囲の光景をモデル化する必要がありました。Digital Canberra プロジェクトにより、Geocon のエージェントは特定の開発プロジェクトから半径 5 km までのエリアを購入希望者に見せられるようになりました。
 
Courtesy of 51WORLD

51WORLD のグローバル セールス ディレクター、Michael Tang 氏は、次のように述べています。「Geocon がキャンベラの実際の建設を進める間、51WORLD がデジタルとバーチャルの世界でキャンベラを構築しました。実在する物のデジタル レプリカを作成し、その物体のリアルタイムの状態をデジタル レプリカに反映できるよう、データ ストリームをやり取りしました」

このプロジェクトでは、複数の課題が発生しました。たとえば、別の開発エリアに切り替えたいユーザーのためのフライスルー ビューの実装です。当初の計画では、スムーズな動作を維持できるよう、エリアを切り替える間は読み込み画面を使用することになっていました。それが Unreal Engine により、フライスルー ビューが実現しました。システムの速度が下がらなかったのは、リソース使用量を減らしたからでした。ユーザーが特定のエリアに注目しているときは、離れたエリアのオブジェクトを一時的に取り除いたのです。

内装のウォークスルー機能については、51WORLD は読み込み画面を残すことにしました。それは、チームがさまざまな方法で内装エリアのビジュアルの質を改善できるようにするためでした。「Unreal Engine と緊密に連携し、Unreal Engine のブループリントのパフォーマンスを当社製品に完全に統合しました」と Tang 氏は言います。

その結果、51WORLD はクライアントの期待を超えるプロジェクトを完成させることができました。Geocon はインタラクティブなツールを使用して、開発プロジェクトが周辺環境にどのように溶け込むのかを購入希望者が俯瞰して見られるようにしています。Geocon のシニア セールス エグゼクティブ、Matthew Rastar 氏は、次のように述べています。「このツールにより、プロジェクトに息が吹き込まれ、クライアントは現実味を感じられます。クライアントは感心し、当社は従来のようにただショールームを案内するよりも高い成約率を達成できます。これは状況を一変させるツールです」
 
Courtesy of 51WORLD

富裕層向け不動産デベロッパーが Unreal Engine のリアルタイム テクノロジーを活用してどのように未来の販売用ツールを構築しているのか、いくつかの例を紹介しました。こうしたツールにより、購入希望者は将来の自宅をイメージしやすくなり、販売チームは重要となる事前販売の契約を取りやすくなります。

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