まだ建てられていない住宅の魅力をリアルタイム テクノロジーで伝える
オーストラリアの高級マンション専門業者 DevelopWise は、この課題に直面し続けてきました。パースに建設中の Sanctuary Mount Pleasant について、見込み客に視覚的にイメージしてもらうために、これまでとは違った手段を試すことにしました。
ニュージーランドのオークランドに拠点を置き、高い評価を受けている建築とインフラストラクチャのビジュアライゼーション スタジオ、Buildmedia の協力を得て、DevelopWise は、建築中のマンションの完全なデジタル 3D モデルを作成し、顧客がそれを見られるようにしました。そのために、タッチ スクリーンと VR を活用した Buildmedia 独自のモデル ルーム、Realspace を利用しました。それはすばらしい経験となりました。DevelopWise のマネージング ディレクター、John Woon 氏は次のように述べています。「Realspace がすばらしい形でプロジェクトを表現してくれているので、従来のモデル ルームはもう必要なくなりました」
リアルタイム テクノロジーによる開発中の建物のビジュアライゼーション
Buildmedia は、10 年にわたってリアルタイム テクノロジーを利用し、ここ 4 年間は Unreal Engine を使っています。Unreal Engine を利用して開発された Realspace は、タッチ スクリーン搭載の大型テレビ向けに作られたもので、完成前の物件を展示し、販売することを目的としています。当然ながら、Buildmedia の元を訪れる不動産デベロッパーは先進的な考え方をする傾向があります。DevelopWise もその例外ではありませんでした。Buildmedia のテクニカル ディレクター、Tim Johnson 氏は次のように述べています。「DevelopWise の方々は、開発中の物件の仮想的なウォークスルーをインタラクティブなインターフェイスを使って作成し、顧客に提供することの価値を見出していました。それだけでなく、Unreal Engine を使えば途方もない量のマーケティング資料を生成できるということも理解されていました」
慎重な見込み客は、未完成の住宅に投資する前に、その空間についてよく理解しようとします。そこでは信頼が鍵となります。不動産業者が信頼を獲得する方法の 1 つは、推測に頼らなくて済むように支援することです。「Unreal Engine のリアルタイム モデルでは、顧客が自分の手で操作できます。マンション全体を見て回り、どこへ行くか自分で決めることができるのです」と Johnson 氏は述べています。
その結果、開発中の物件について顧客が把握するためにかかる時間が短くなり、販売にかかる時間が大幅に短縮されました。「Realspace のおかげで、お客様がプロジェクトについて理解しやすくなりました。多くの情報に基づいて購入の判断を下せるようになっています」と Woon 氏は述べています。また、3D のレンダリングと間取り図がいくつかあるというだけではこれほどの透明性を確保するのは難しい、とも Woon 氏は述べています。
タッチ スクリーンと VR を活用したモデルルーム、Realspace を利用することで、高級マンション Sanctuary の室内のモデルを顧客に見せることができます。さらに、建物について説明し、質問に答えて、各種の仕上げを紹介できます。よりイマーシブなエクスペリエンスのために、プラグ アンド プレイに対応した VR ヘッドセットを使うこともできます。
Johnson 氏は次のように述べています。「リアルタイムのビジュアライゼーションを使うと、販売する側は、技術的に必要なものがそろっていると感じられて、多くの質問に答えられるようになります。顧客の側は、建築中の建物についてよく理解でき、多くの情報を提供されて支援されていると感じることができます。そうするとモデル ルームへの滞在時間が長くなります」
不動産市場向けのフォトリアルな画像とアニメーション
Buildmedia では主に 3ds Max を使っています。16 年にわたって、建築前の建物やインフラストラクチャのビジュアライゼーションを作成するために 3ds Max を活用してきました。「私たちのワークフローは、3D モデリング パッケージを使用して設計をテストする建築会社よりも、ジオメトリの負荷を考慮するゲーム デベロッパーのものに近くなっています」と Johnson 氏は述べています。Buildmedia のチームは、このプロジェクト独自のテクスチャの開発や、同社独自のカスタム マテリアル アセットの開発に、Substance Designer を使用しました。Johnson 氏は次のように述べています。「こうすることで、価値をもたらすもの全体を制御できます。アーティストはテクスチャを適切なスロットにそのままドロップでき、必要に応じて命令のオンオフをすぐ切り替えることができます。Unreal のマテリアル システムを活用すれば、マテリアルを作成するたびに車輪を再発明する必要はありません。また、すべてがインスタンス化され、可能なかぎり最適化されていると確信を持つことができます」
仮想的なショールームを作成するだけでなく、Buildmedia は、マーケティングに利用できるさまざまな画像やアニメーションも提供できました。「完成前の物件を販売するには、高品質の画像とアニメーションを Web と印刷物で利用できることが重要です。Unreal Engine で得られる画像とアニメーションの品質はすばらしいものです。この点が、建築ビジュアライゼーションと物件のマーケティングにおいてリアルタイムが有力な選択肢となりつつあると感じている理由の 1 つです。Unreal Engine を使うと、インタラクティブなモデルに加えて、従来の方法よりもはるかに多くのコンテンツを効率的に制作できます」
リアルタイム レイ トレーシングによるリアルな影と反射
このプロジェクトは、Sanctuary の施設内のさまざまな空間が対象となり、住宅の室内、ロビー、ジム、屋上庭園などがありました。Buildmedia のチームは、そのうちの 1 か所に着目しました。Johnson 氏は次のように述べています。「屋上庭園が重要なところになり、また難しいところにもなるとわかっていました。クライアントは、従来の建築ビジュアライゼーションのような詳細度を期待すると考えられます。また、植物の量も問題でした。さらに、プレゼンテーションは完全にインタラクティブなもので、設計に含まれるどの要素にも歩いて近付くことができるので、植物をうまく作ることが重要でした」コンテンツの品質をさらに向上させるために、Buildmedia のチームは、NVIDIA RTX テクノロジーを利用したリアルタイム レイ トレーシングを使いました。屋上庭園を紹介するアニメーションは、レイ トレーシングによる影と反射を利用しています。Unreal Engine に組み込まれたノンリニア エディタであるシーケンサーを使って解像度が 4K の 95 秒間のビデオをレンダリングするのに、NVIDIA Quadro RTX 6000 GPU を 1 枚搭載した 1 台の PC で約 2 時間かかりました (1 フレームあたり 2.5 秒。従来のオフライン レンダラで同じ作業を行うと、1 フレームあたり 30 分、つまり約 700 倍の時間がかかります)。
インタラクティブなエクスペリエンスのために、さまざまな詳細度を試して、ディテールとフレームレートを両立させる点を探し出しました。インタラクティブな屋上庭園のシーンは、NVIDIA GeForce 2080 RTX GPU を使うと 35 fps で実行できます。「普通、室内にある植物については、高密度でベイクすることを厭わないのですが、この屋上庭園には数百の植物があり、そのすべてで精密なディテールが求められていました」と Johnson 氏は述べ、さらに付け加えて、屋上のすべての植物は可動オブジェクトで、Unreal にインポートする前に V-Ray を使ってライティングをベイクしたと説明してくれました。そのおかげで、チームがシーンですばやくイテレーションできるようになりました。また、一部で Quixel Megascans (現実のテクスチャの高品質なキャプチャ) を活用してプロセスを高速化しました。
室内の設計を正しくすることもプロジェクトの重要の一部でした。Johnson 氏は次のように述べています。「Unreal Engine を使うと、家具のアイテムをシーンにドロップして、クライアントとテストして、従来の方法よりも早くフィードバックを反映できます。動的なライトを使いながら物を動かしてみるだけで、レイアウトを迅速にテストできました。設計を確定させる前に、リアルタイム環境内で多くの修正を行えるようになりました」
Buildmedia のチームは、Unreal Engine のビジュアル スクリプティング システム、ブループリントを活用しました。Johnson 氏は次のように述べています。「独自のツール開発と Unreal Engine でのブループリントの作業に多少時間をかけたおかげで、ワークフローを大幅にスピードアップできました。ブループリントはアーティストにとって強力なツールです。シーンのセットアップに関わる面倒な作業の一部を自動化できます。UE で開発した当社の Realspace テンプレートにはたくさんの機能があり、できるだけ少ない手順で簡単に実装できるようにしてあります」
Realspace テンプレートの機能には、レベルを上下に移動させてのさまざまな視点のテスト、マテリアルの変更、インターフェイスから直接実行可能な画像のレンダリングとメール送信、間取り図や画像などのマーケティング資料の取得などがあります。これらすべてがブループリント システムの要素を使用していて、Buildmedia のチームがプロジェクト内ですばやく実装できるようになっています。
まだ建設されていない不動産の販売方法の変革
Buildmedia と提携して以来、DevelopWise は不動産のマーケティングと販売にリアルタイムのアプローチを全面的に取り入れています。先日 Crown Towers Perth Ballroom で DevelopWise が主催した、比較的フォーマルなイベントでは、タッチ スクリーンをセット アップして、人々が建物を見て回れるようにしました。
「購入者との打ち合わせが、より詳細で、情報の多いものになっています。一度の打ち合わせで物件について理解していただけます。30 分の予約が、平均で 1 時間 30 分まで長引いていますが、これは魅力的なエクスペリエンスを提供できているおかげです」
リアルタイムのインタラクティブなエクスペリエンスと、UE4 を利用したフォトリアルなレンダリングは、現在 DevelopWise が販売とマーケティングに使用する重要なツールとなっています。「まだ建てられていない建物を取り扱っているということを考えると、Realspace は従来の物理的なモデル ルームを上回る最も効果的な販売方法です」と Woon 氏は述べています。
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