Image courtesy of Co-op Live

音楽のライブ会場 Co-op Live のデジタル レプリカ

2022年6月23日
今、音楽のライブ イベントに出かけると、高い確率でゲーム エンジンを利用した魅力的なビジュアルを経験することになるでしょう。ライブ イベントの制作者の多くがショーにリアルタイム CG を取り入れています。たとえば Deadmau5 はビジュアルをライブでレンダリングし、ABBA はデジタル アバターにヒット曲を歌わせています。
ところで、ゲーム エンジンはパフォーマンスのためだけでなく会場の設計にも使われていると知ったら、驚く方もいるのではないでしょうか。

Co-op Live はそのような会場の 1 つです。ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンに匹敵する世界最高峰の音楽とエンターテインメントのイベント会場を目指すこのプロジェクトは、極めて野心的な取り組みです。

ほかの大規模なアリーナのほとんどとは異なり、Co-op Live は音楽を最も重視して設計されました。スマートな「ボウル」型の設計になっており、アーティストとファンのエクスペリエンスを向上させる最先端のテクノロジーを導入しています。マーケティング資料によれば、Co-op Live はイギリスで最も高度で、サステナブルであり、社会的な責任を意識したライブ エンターテインメント アリーナとなります。

これは明らかにイノベーションを中核に据えたプロジェクトです。未完成のプロジェクトについて関係者に伝える役割を担うことになったビジュアライゼーション スタジオ Soluis は、課題に直面しました。このようなプロジェクトの建物が完成には程遠い段階で、どうやってそのサイズ、規模、ユニークさを伝えればいいのでしょうか。
 

音楽のライブ会場のデジタル レプリカ

その答えは、ステージで魅力的なビジュアルによってオーディエンスを感嘆させるために使われている最先端のテクノロジーを活用することでした。Soluis は Unreal Engine を使い、Co-op Live のメイン アリーナと周囲のホスピタリティ エリアを完全にインタラクティブなものとしてバーチャルに再現しました。このバーチャルの会場を使って多数のショットを生成して評価し、それをプロモーション映像内のアニメーション シーケンスで利用しました。
Image courtesy of Co-op Live

主要な投資家である Oak View Group (OVG) によって提供された企画の説明では、新しい会場ともてなしのための各種サービスについてのプロモーションを支援するために、高品質なメディアのさまざまなアウトプットと体験型のプレゼンテーションの選択肢が必要であることが明示されていました。リアルタイム テクノロジーを使えば、まだでき上がっていない建物を高忠実度の CG で再現し、静止画、アニメーション、インタラクティブなプレゼンテーションを作ることができます。このテクノロジーはプロジェクトに最適なものでした。

Co-op Live の建設は 2020 年 11 月に開始され、2023 年にはアリーナがオープンする予定です。サッカー クラブ マンチェスター・シティのホームであるエティハド キャンパスに位置するこの会場は、28 のスイート、12 のラウンジとクラブ スペース、32 のバーとレストランを取り揃え、2,000 を超えるプレミアム シートと VIP エクスペリエンスを提供します。

完成した建物がどのようになるか理解できるようにするために、Soluis は一連の映像を作成しました。映像によって会場を紹介し、主要なホスピタリティ エリアのそれぞれについて、そのエネルギーと現代的なデザインを伝えました。その映像は、開発が行われる地域周辺の文化的影響をとらえると同時に、標準的なウォークスルーのプレゼンテーション以上に動的なものである必要がありました。
 
Image courtesy of Co-op Live

最初の段階で複数の成果物が必要となりました。まずは、映像によるプレゼンテーションと、主要なホスピタリティ エリアのそれぞれについての詳細なバーチャル環境の作成が重視されました。
 

プリビジュアライゼーションのための Unreal Engine

Soluis が世界トップ レベルのアリーナの開発におけるビジュアル エクスペリエンスを担当するのはこれが初めてではありません。以前にはサッカー クラブ エバートンの新しいスタジアムの屋内外のビジュアライゼーションを作成したことがあり、その際にはビジュアライゼーション パイプラインの基盤として Unreal Engine を使用しました。Soluis の CEO、Scott Grant 氏は次のように述べています。「ビジュアル開発プラットフォームとしての Unreal は、リッチなビジュアル コンテンツの制作能力の面でほかに並ぶものがありません。このプロジェクトでは、Soluis のチームがさまざまな面で Unreal Engine の最新機能やアドオンを活用し、会場のバーチャルな表現を強化できました」

Unreal Engine のさまざまなコア機能を活用しました。Datasmith を使って、最適化された会場のモデルの準備とインポートを行いました。リアルタイム レイ トレーシングによって、動的な光源の反射、オクルージョン、シャドウが改善されました。新しい GPU ライトマスによって、屋内でのベイクされたライティングがリアルなものになりました。Movie Render Queue によって、カメラのさまざまなシーケンスのエクスポートを容易に行うことができました。

また、Unreal Engine マーケットプレイスなどから入手できる各種のプラグインを利用しました。Anima の CG キャラクターと最新の 4D ライブラリを使ってバーチャルな会場に人を配置しました。Vertex のアニメーションが設定された群集を複数のイベント モードで利用しました。DMX プラグインを活用して、ステージでのさまざまなパフォーマンスに使われるライティング リグを制御しました。
 
Image courtesy of Co-op Live

プロジェクトの初期段階で、クリエイティブ チームはクライアントおよび著名なアリーナ設計集団 Populous のデザイン チームと緊密に協力しました。8 週間かけてバーチャルなアリーナが作成され、クライアントとデザイン チームからの情報により、詳細な内装が加えられ、正確なマテリアルとライティングが適用されました。

屋内の各エリアについての初期のプリビジュアライゼーションは、デザインとホスピタリティ施設を最適に表現する方法についての建設的な会話につながりました。「Unreal Engine を使ったおかげで、デザイン レビュー全体を通じて、プロセスでのコラボレーションがほかのツールでは達成できないほど強化されました。また、柔軟性を活かして変更や意思決定を迅速に行うことができました」と Grant 氏は述べています。
Image courtesy of Co-op Live
このプロセスを通じて、クリエイティブ チームはアリーナや重要なエリアの背景にある物語について情報を集め、その物語を紹介映像のストーリーボードに組み込むことができました。その映像が各空間を初めて紹介することになる予定でした。バーチャルな環境にはステージでのアクティベーションをシミュレーションしたものがいくつも組み込まれ、その環境で音楽のライブ パフォーマンスを表現するシーンが開発されました。

でき上がった環境はフォトリアルなアニメーション シーケンスの舞台となり、そのシーケンスを使って高解像度の各プロモーション映像が作成されました。映像には後ほど印象的な 360 度のパノラマ画像が付け加えられました。これは見込み客向けの軽量オンライン バーチャル ツアーの基礎となりました。
 
Image courtesy of Co-op Live

リアルタイム テクノロジーと不動産開発

Co-op Live のようなプロジェクトでは、効果的なビジュアル エクスペリエンスが関係者のエンゲージメントにとって重要です。リアルタイム テクノロジーを活用すると、提供できるビジュアル エクスペリエンスの範囲が飛躍的に広がります。「Unreal Engine を使うことで、メディアを制作したり、インタラクティブでイマーシブな体験を提供したりできるようになり、クライアントがあらゆる選択肢をとれるようになります」と Grant 氏は述べています。

さらに、この種のプロジェクトでインタラクティブな 3D テクノロジーを活用することのメリットを Grant 氏はいくつか挙げています。それは、デザインに関して即座に意思決定できること、デザインのレビューを協力して実行できること、高品質なレンダリングを高速に実行できることです。
Image courtesy of Co-op Live
リアルタイムのアプローチのメリットはクライアントにも及びます。不動産デベロッパーが変更や更新をリアルタイムで確認できるようになります。クライアント側の全員が空間とプロジェクトについてはっきりと理解できるようになり、技術的な理解は不要になります。また、忠実度の高いエクスペリエンスであるにもかかわらず、従来のプロセスを使った場合よりもずっと速く作成できます。

Soluis が作成したバーチャルなメディアによって、OVG のプロジェクト チームは拡大しつつある大規模な関係者のグループと容易にコミュニケーションをとることができています。「もてなしのための各空間のデザインと雰囲気、それにメインのパフォーマンスとの距離の近さをうまく伝えることができています」と Grant 氏は述べています。

映像によるバーチャルなツアーは、オンラインで、マーケティング資料内で使われています。メディアを大画面に表示することで、訪問者との会話の影響を最大限に高めています。

営業チームは没入感のある軽量オンライン ツアーを使い、訪問者を各空間に送っています。「バーチャルの空間ができているので、将来的に生じるエンゲージメントのためのあらゆるシナリオに対応できます」と Grant 氏は述べています。

会場のデジタル レプリカができたことで、Co-op Live のプロモーションに利用できる新しいメディアを作る無限の可能性が開かれました。
 

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