2018年12月6日
Unreal Engine が支える、SCAD 校の VR イマーシブ エクスペリエンス「Destination Imagination」
「Destination Imagination」は、SCAD における最新の VR プロジェクトです。ユーザーは、地球で起きる大規模な破壊から逃れて宇宙を旅するというスリリングな体験ができます。ゲーム エンジンの選択は学生に任されており、Unreal Engine が選択されました。Unreal Engine が選択された理由は、そのパワーと効率性、堅牢なインターフェイス、イテレーション時間、シネマティックスのエディタである Sequencer にありました。
今回、私は SuAnne Fu 教授 (ITGM=インタラクティブ デザインおよびゲーム開発学科) と Jack Mamais 教授 (Destination Imagination プロジェクトのプロデューサー) のお二人にお話を伺いました。UE4 を使ったワクワクするような冒険としてのイマーシブ リアリティ プログラムについて詳しくお話していただくとともに、VR および AR の将来についても語っていただきました。
SCAD にはイマーシブ リアリティ プログラムがありますが、VR についてはどのような考えをおもちなのか、教えていただけますか?
SuAnne: さまざまな観点から、VR と AR はそれほど新しいものとは言えません。フライト シミュレーションや HMD などは 1970 年代からあります。しかし、私たちが現在目の当たりにしているものは革命です。VR と AR がデジタル コンテンツと結びつくという革命が起きているのです。AR と VR によって、ユーザーはデジタル コンテンツにより直接触れることができるようになりました。しかも、さまざまな点でよりスマートに、なおかつ、ニーズに直結する形で。そのためには、設計上配慮しなければならないことがあります。視野角を完全にカバーするとともに、VR および AR 空間内をユーザーが移動でき、その経験を制御するデータが利用できるように配慮しなければなりません。
将来の VR に備えて、どのような教育を学生たちに現在提供しているのですか?
SuAnne: イマーシブ リアリティ専攻のためのプログラムでは、AR と VR のさまざまな応用に焦点を当てています。学生たちに教えているのは、インタラクティブなコンテンツを制作するためのテクニカルなスキルだけではありません。ストーリーテリングやユーザー体験のデザインを重視するデザイン スキルも教えています。それによって結局は製品全体の効果が高まるからです。このことは、ゲームのプロジェクトでも、シミュレーション/トレーニングのプロジェクトでも、ビジュアライゼーションのプロジェクトでも変わりはありません。
VR を使用することから最も恩恵を受けている業種は何だと思いますか?
SuAnne: VR の現状についてだけ言えば、エンターテイメントとシミュレーションの業界が最も大きな恩恵を受けているはずです。しかし、今私たちの大学と交流のある外部パートナーは、多岐にわたっています。ポストプロダクション ハウス、自動車/航空機の設計、教育/訓練のコンテンツ ドリブンのスタジオなどの業種にまたがっています。それに対して AR は、現在、多くの広告会社にますます利用されるようになりました。エンドプロダクトが電話機やモバイルデバイスで簡単に利用できるので、アプリケーションのいたるところでも使われるようになりました。
どのようなコースが開講されているのですか?
SuAnne: 開講しているコースには、3D コンテンツ制作、UI (ユーザー インターフェイス) /UX (ユーザー エクスペリエンス) のデザイン、プログラミングのコースがあり、さらに、VR/AR 環境のためのエクスペリエンス デザインにも配慮されています。本校は、2D スクリーン空間に長い間取り組んできたため、ユーザーの視線と完全にインタラクティブな全方位空間のために何かを作るという構想をもつこと自体が、まったく新しいプロセスとなりました。VR/AR のためにデザインすることによって、エージェンシーの問題が浮上し、私たちのデジタル コンテンツとの向き合い方についても再検討するようになりました。
Unreal Engine 4 は、このプログラムでどのような役割を担っていますか?
SuAnne: 現在、サバンナ キャンパスでは、4 年生による共同制作プロジェクトと外部パートナーとのプロジェクトで VR コンテンツを作成しています。そのときに主に使われているのが Unreal Engine です。SCAD のこのプログラムでは、学生はデザイン分野、テクノロジー分野、アート分野に特化することができます。UE4 は、学生たちがプロレベルの作品を制作するための原動力となっています。信頼できるツールセットと役に立つ機能が豊富に搭載されている Unreal Engine を使うことによって、オリジナルな仕組みと機能を備えたゲームやプロジェクトのプロトタイプをすばやく作成できます。驚くべきライティング機能とマテリアルのための機能によって、ほとんど苦労せずに、ごくごく普通レベルのプロジェクトをプロレベルの見栄えまで引き上げることが可能になっています。
VR に関心をもっている学生たちについて教えてください。彼らをインスパイアするものは何でしょうか?
SuAnne: VR に興味がある学生たちが学んでいる分野は複数にわたります。アニメーション、映画、ゲーム、建築、インダストリアル デザイン、サウンド デザインなどにまたがります。これらの学科では、だいたい、バーチャル コンテンツのための空間デザインの授業があります。学生の多くは、新たな VR/AR のプラットフォーム上で自ら推進することができるイノベーションから刺激を受けています。当校はアートとデザインの学校なので、学生には、自分のアートスキルを表現できる新たな方法に関わりたいという強い思いがあります。窮屈な枠組みやカメラ視点からとうとう解放されるということに、大いに魅力を感じているのです。
キャンパスにある VR ルームは非常に興味深いものです。このプロジェクトについてもう少し教えていただけますか?
Jack: 私たちは最近学科を拡張して、AR と VR のコースを新設しました。そのため、実習用のスタジオのための場所を用意する必要がありました。そこで大学は、Shed (倉庫) と呼ばれている大型の物件を整備して、VR および AR のための設備を常設できるようにしました。これで学生たちは、この魅力的な分野ですぐにでも実習に入れるようになりました。
「Destination Imagination」VR 体験は、どのようなきっかけで制作しようと思ったのですか?
Jack: 「Destination Imagination」というアイデアは、劇的な体験とバーチャルな体験を結びつけました。入学を考えている学生たちに対して、SCAD のさまざまな学科がコラボレートして、それぞれのレベルが向上している様子を示すことができました。これは、参加者をエキゾチックな場所に運ぶという圧巻の体験を思いついたことで実現できたことなのです。構想段階では、ライブ アクションの部分はどうあるべきかとか、軌道に乗った時に一体どのようなことが起きるのだろうかといった高度なアイデアもありました。そのようなものが引き金となって、細部を決定する前に、さまざまなアイデアが連鎖的に思いつくことができたのです。
このプロジェクトに参加している学生の数を教えてください。
Jack: プロジェクト全体では、100 人以上の学生が活動しています。彼らが学んでいる分野は 8 つにまたがり、所属している学科は、劇作科、パフォーミング アーツ科、インタラクティブ デザイン科、ゲーム開発科、サウンド デザイン科、新設のイマーシブ リアリティ科です。UE4 を使ったこのプロジェクトの VR 部分には、およそ 20 名の学生が参加しました。彼らは、小道具のモデリング、マテリアル制作、FX アーティスト、ライティング、スクリプト、サウンド デザイナーについて学んでいます。
この VR 体験を制作するために Unreal Engine を選択したのはなぜですか?
Jack: SCAD では、製品を制作するために使うゲーム エンジンは学生たちが選ぶのですが、Unreal Engine にはパワーがあり、しかも簡単に使用できるようになるため、アーティストやデザイナーにとっては素晴らしいツールです。アイデアが浮かぶと、それが果たして実現可能であるのか、すぐさまテストすることができます。Unreal Engine 4 が使われたのは、ひとえに、現代のゲーム エンジンの中でも最高度の忠実度とライティング機能が搭載されているからです。他のエンジンも検討されましたが、リニアなコンテンツという条件をもつ今回のプロジェクトでは、UE4 の新たなシネマティックス エディタである Sequencer から得るものが非常に大きかったのです。また、最初の企画を初めて実行できるようになるまでにトータルで 6 か月を要しましたが、最終的なコンセプトが定まるころには、制作期間が正味 3 か月しか残されていませんでした。しかし、UE4 を使うことによって学生たちは、すばやくプロジェクトの全体像を形作り、フィードバックに基づいて迅速にイテレートすることが可能になりました。
どのような UE4 の機能を使いましたか?
Jack: 「Destination Imagination」では、Unreal Engine の多数の機能が使われました。たとえば、キーフレーミングのために Sequencer エディタ、パーティクル エフェクトのために Cascade エディタ、スクリプティングのための Blueprint エディタなどが使われました。このプロジェクトはリニアな体験を提供するので、その大部分は Sequencer のキーフレーミングを通じて制御されています。また、Actor クラスの Blueprint を作動させるためには、Event トラックを使いました。これによって、パラメータ化されたランダムな要素を使ってリニアな体験を制作することができました。たとえば、プロジェクトがプレイされるたびに、さまざまなインターバルをもたせてロケットを背景で離発着させたり、カプセルが地球の軌道にあるときにさまざまな高度で浮遊する物体などを表現することができました。
SCAD のイマーシブ リアリティ プログラムについて、さらに詳しい情報を得るためには、同校のプログラムの概要のページをご覧ください。Unreal Engine のスキルを磨くのなら、無料のオンデマンド動画が Unreal Engine Online Learning のページに置かれているので、学習コースを選んで 、今日から始めることができます!