このコースでは、学生がリアルタイムの学習環境に浸りながら、モーション キャプチャについて学ぶことができます。ハードウェア (モーション キャプチャ スーツやフェイシャル キャプチャ テクニック) とソフトウェア (アンリアル エンジン、MotionBuilder) の組み合わせにより、学生はアンリアル エンジン内で映像の脚本を書き、映像を監督し、仮想的に撮影し、編集することができます。
このすばらしい授業について、テキサス大学オースティン校の Chetty 氏に詳しくお話を伺いました。
ご自身の経歴について教えてください。
こんにちは、Deepak Chetty です。私は、テキサス州オースティンを拠点とする映像作家、教育者、デジタル アーティスト、デベロッパーです。プラット・インスティテュートで映像と美術の基礎を学び、2007 年に美術の学士を取得しています。映画、テレビ業界で数年間、ポスト プロダクションのプロ、フリーランスのカメラマンを務めてから、オースティンに移り、テキサス大学 (UT) の有名な映画プログラムで映画製作の MFA (修士) を取得しました。
UT 在学中は監督と撮影技術を中心に学びました。映像作家としての幅を広げるために、新しいテクノロジーをできる限り習得したいと決めたときに、コンテンツ作成ツールとしてアンリアル エンジンにたどり着き、夢中になりました。それ以来、2015 年から母校で教えている「イマーシブメディア概論」の授業で UE4 を使っています。
このコースに人気が集まったこと、またこのテクノロジーが進化し、映像作家の間で広まったことが、 UT での「モーション キャプチャ スタジオ」コースの立ち上げにつながりました。このコースは専門課程の学部生や大学院生が対象です。
モーション キャプチャ スタジオというのはおもしろそうです。 もう少し詳しく教えていただけますか。
モーション キャプチャ スタジオのクラスでは、UT の光学式モーション トラッキング システム Vicon を使用して、学生が仮想演技を生成し、UE4 でレイアウト、ライティング、撮影、編集を行います。学生は、リアルな演技をリアルタイムで修正、編集、反復し、完全にコンピュータの中で行う映画製作の可能性を探っていくことができます。次世代の映像作家やクリエイターは、このテクノロジーを利用した完全なリアルタイム環境で作業する間、本当に自由な世界を探求できる機会を与えられます。学生は UE4 のシーケンサー ツールで作業の大部分を行い、また仮想セットの組み立てもエンジン内で行います。
UE4 を選んだ理由を教えてください。
このクラス、あるいは私が教える他のクラスでも可能であれば UE4 を使用することが当初から決まっていました。ほとんどの学生から最初に聞くのは、UE4 が実現するユーザー フレンドリーなデザインは、ほかの市販されている 3D アプリケーションや開発用ツールとは比べ物にならないほど優れているという声です。開発ツールを、使いやすさ、画像の忠実度 (映像に関わる人には非常に重要)、機能の3つの点から評価するとしたら、通常はいずれかの面で妥協が必要です。UE4 ならその必要がないのです。映像を教える者として、頭を悩ますことはまったくありませんでした。学生にプログラミングや高度な 3D アプリケーションの経験を期待することはできないからです。
このプログラムの優れた点は、幅が広いだけでなく、奥も深いところです。基礎的なことを教えたあと、どの程度、深くまで掘り下げるかは、学生たち自身が決められます。教育課程レベルの仮想的な映像制作という点から見れば、エンジン内で実際にできることの上っ面をなでるだけでも、これまでのワークフローに引けを取らない、見事な作品に仕上がります。従来とは異なるレンダリング ワークフローとリアルタイム再生によって時間を節約できるため、学生はクリエイティビティを発揮し、デザインやアイデアを繰り返し試すことに時間をかけられます。
それまではどのように授業を行っていましたか。
以前に使っていたプログラムは、レンダリング パイプラインを備え、ビューポートの質が低く、ワークフロー、インターフェースが複雑で、インタラクションがリアルタイムではなかったため、ほとんどのプロジェクトは実行時に単純化されていました。学生に求められたのはストーリーよりもショットでした。それだけです。現在は、物語を期待できるようになりました。ツールセットが充実し、システム全体が使いやすく、堅牢であるため、モーション キャプチャと仮想的な映像制作が初めての学生であっても利用できます。
リアルタイム テクノロジーを利用するワークフローを説明してください。
UT では、学内のスタジオの 1 つにモーション キャプチャ専用の舞台があります。Vicon システムを使用して、演技を MotionBuilder に取り込み、ここでキャラクターにリグを割り当てます。それを UE4 にインポートしたら、楽しみが始まります。この秋、MoBu ストリーミングを UE4 に直接統合する予定です。また、体の動きとともに顔の動きも取り込めるよう、リアルタイムのフェイシャル キャプチャ ソリューションにも取り組んでいます。現在は、従来型の ADR プロセスで、表情のアニメーションを別個に記録しています。
教育のツールとして UE4 を使用してきた経験についてお話しいただけますか。
教育に UE4 を取り入れたことは、教育者としてのキャリアにおいて、価値ある経験のひとつとなりました。各学期末に学生から提出される作品は驚きに満ちていました。学生の多くは、ゲーム エンジンを使用するのが人生で初めてでした。
学生たちは、授業開始から 15 週間で (週に 2.5 時間のセッションが 1 回)、ゲーム エンジンで何も作ったことがない状態から、インタラクティブなコンテンツの制作を完全に習得し、ブループリントのプロにまでなっていました。映像だけでなく、大学の他の学部から受講する学生も多くいます。ジャーナリズム、生物学、美術を専門とする学生も、それぞれの分野でインタラクティブでイマーシブなコンテンツを作るという希望や目標を持って授業を受けにきます。高校生に UE4 を教えたこともありますが、生徒たちは 2 週間のセッションで、もっと大きなプロジェクトに思い切って取りかかるために必要なスキルをすべて身につけます。このことから、インタラクティブな開発や仮想映画館に関心がある、さらに低年齢の生徒向けのカリキュラムにも取り入れることができると確信しています。
UE4 のようなソフトウェアについて学ぶと、学生が獲得できる自由、引き出される能力は驚異的です。不可能であるか、手が届かないと思われていた創造への可能性の扉が開きます。モーション キャプチャ スタジオのクラスは特に、学生レベルのライブ アクション制作では限界があるか、実のところ不可能である創造への道が大いに拓けると期待しています。安全性やコストの問題を心配することなく、アクション満載の短編を制作したり、材料のコストや調達、スペースを必要とすることなく、芸術作品を精巧に作り上げたりできるため、UE4 は、教育レベルでも、それ以外でも、ストーリーテリング、表現、芸術的才能発掘のためのクリエイティブな手段として極めて貴重なものとなります。
映像制作分野における技術的進歩を踏まえ、映画、テレビ業界を目指している学生には、どのようなアドバイスを送りますか。
コンテンツ クリエイターを目指す学生には、最新のテクノロジーにできる限り慣れておくことをお勧めします。業界の特定の領域の用語を学ぶためだけに、テクノロジーやソフトウェアを使ってみるのも重要です。ディレクターやコンテンツ クリエイターが、そのビジョンを実現するために、共同制作者に正確に伝えることも仕事の一部です。
UE4 などのプログラムの仕組みを基本的に理解している学生は、将来的にモーション キャプチャの統合、リアルタイム VFX、インタラクティブ コンテンツが関わるプロジェクトに取り組むための態勢が整っています。結果的に、作品に対する責任感が強まり、無限の可能性への理解が深まり、クリエイティブなビジョンにおいて全体的に自信がつきます。
キャンパス テスト
テキサス大学オースティン校のモーション キャプチャ クラスで制作されたキャンパス テストをご紹介します。
Sci Fi Shootout と King Chris and Pug
マーケットプレイスに公開されているプロップとキャラクター モデルのアセットを使用して Synty Studios が制作したものです。
Abstract Dance
Chetty 氏と演劇舞踏学部の共同プロジェクトです。リグ モデルとスターター コンテンツの形状が使用されています。未処理のモーキャップのテイクを使用し、フィルタやスムージングは適用されていません。このプロジェクトの所要時間は 1 日でした。
このコースと、その他の新しいデジタル メディア分野のコースについては、テキサス大学オースティン校のウェブサイトをご覧ください。
Chetty 氏略歴
Deepak Chetty 氏は、米テキサス州オースティンを拠点とする受賞歴のある映像作家、ビジュアル アーティスト、教育者です。テキサス大学オースティン校の RTF (ラジオ/テレビ/映画) 学部で、専門課程の学部生や大学院生を対象とする授業をフルタイムで受け持っています。メディア イメージングとコンサルティングの新興企業である Digital Quilt のパートナーであり、またフルサービスのクリエイティブ プロダクション スタジオ Revelator を通じて商業的作品を監督しています。現在は 2 本の長編映画に取り組んでおり、また短編 1 本をアンリアル エンジンで制作する予定です。